裕子先生の家族日記

熱が出た日は

家族、パパ、ママ、子供達。お互いに見つめ合い、話し合い、よく遊び、よく出かけ、外食もする。
サラリーマンは子供達と休みも土・日・祭日と一緒です。核家族であり、隣りに祖父母が住み、孫に手を貸し、目を向けていてくれる。でも、祖母はまだ勤めている。
そのため娘が
「直也が夜中に熱が38度になって、今37度ちょっとだけど、お医者さんのところに行ってから仕事に行かないといけないので、直也を迎えに来て夕方まで見て欲しいんだけど・・・?」と電話をかけてきた。娘は今日から新年度となり休めない立場にあるとか
「明日もお願いします」
頼む方も辛い思いだろう。医院のところで直くんと薬を受け取り、千代田町から館林の店に着いた。直くんは夫と店の博子ちゃんの前で、薬を飲むためぬるま湯を含み、上を向いて、口をポカリと開けて待っている。
粉薬を2包入れると
「にがい!」と叫ぶ。
また水を入れて上を向き、口を開ける。そこに粒を2つ入れる。ゴクリと飲んで
「気持ち悪い!」と叫ぶ。
見ている大人は
「エライねー」と感心していた。
板倉の家に連れて行くと、すぐテレビをつけ、入力してあるビデオを出して映画を見ている。何でわけわからない。リモコンの操作をして、見たいものを出せるんだろう。不思議な能力だと感心する。
ある日もアピタでゲームをガチャガチャ、バタバタと大きい音の中、めまぐるしい速さの中で上手にパタパタ押してやっている。そして「100円入れると・・・」と機械が言う。「続けて出来ます。」(アーもったいない他の人にとられてしまう!)と見ている私もヒヤッとする!直くんが100円を入れるとガチャッと音がすると同時にまた大きな音で続いてゆく。次のお客さんの父子が待っている。
「これで終わりだよ!」
声をかけないと終わりそうもない。直くんは手に100円を6枚持って握っていたけど、横から100円を渡す夫がいたから、まだ残っているはずだった。今日も熱があるのに直くんは「アピタ!」「アピタ!」と言いながらカードと100円を握っていた。
「ママが迎えに来るからお店に行くよ!」
車に乗ってからも「アピタ!」とうるさい。
私は仕方ないと腹をくくった。「直ちゃん!今日は熱があって、お医者さんに行って、お休みしているんだから、アピタでゲームは出来ないの!」
「ばぁばは本当に怒るよ!車の中でうるさいと危ないし!」
私は低い声で力を込めて怒った。
その後気がつくと、後ろの席がヒッソリしている。手で探っても
「直ちゃん、どこにいるの?」と言ってもシンとしていた。
駐車場について車のドアを開けると反対側のドアの方にくっついて泣いた顔をしていた。また反対に廻ってドアを開けると、反対に逃げる。腰をかがめて中に入り「直ちゃん!」と直くんを捕まえた。
しっかり抱いた。直くんもしっかりと身体を付けてきて抱かれた。
かわいそう。アーでも良かった。直くんは素直ないい子になって何もなかったように店に飛び込んでいった。それから台所に入ってきて
「おなかすいた!」
「ラーメンでいい?」
「ウン!」
床に坐って小さい折りたたみの椅子を広げて
「ここで食べる」
「かわいいね」
ママが来て
「イイナー!家もラーメンにしようかな!」と喜んでいた。
良かった。

(イラスト : 菊池裕子)