裕子先生の家族日記

直ちゃん六才になる

七月九日の日曜日。直ちゃんとママの誕生祝いが千代田町の娘家族の家で催された。娘の手料理が出てくる。娘はお勝手に立ち、ホカホカの出来たてを出してくれる。リビングにお勝手がくっついていて、お勝手仕事をしながら、話に参加し、一番に笑っていられる。パパさんの御両親と一緒に楽しませてもらう。「おめでとう!」の声があがり、「カンパイ!」となったら、直ちゃんは嬉しそうに照れていた。
私達は大変な忘れ物をした。娘のところに行く前に『あっちに寄り、あれをして、こっちに寄り、これをして・・・』などと計画的に動く事に夢中で、『最後にジョイフルのジャパンミートで牛乳や野菜などを買って保冷バッグに入れて・・・』などと考え動いていた。娘に頼まれたものを渡して、やれやれとホッとしてくつろいでいた。孫達はパパさんの友達と連れあい、昭和村の方へサッカーを見に出かけていて留守だった。娘と会話しながらテレビを見ていて思い出した。
「直ちゃんのプレゼントは?」
忘れた。誰が悪いと言っても遅い。思い出すのも遅すぎる。車で往復する事を考え・・・思っただけでくたびれる。「十一日の本当の誕生日に持ってくるよ!」と私。「大丈夫。こっちの家からのプレゼントがあるから大丈夫だよ。」と娘が言うのに甘えた。笑点が終わる頃、ガヤガヤと帰って来た。「ソフトクリームを食べた。一つ五百円!」と嬉しそうに笑いながらパパさんが話した。孫たちも満足そう。バタバタと席につき、テーブルの上に出来たての御馳走も並び、コップにジュースがつがれ、「直ちゃん、オメデトウ!カンパーイ!」嬉しそうな直ちゃん。ニヤけていた。
龍の頭がついている大きな剣。同じ様なおもちゃを見た事があるけど、新しい形のが出て来て、子供をとりこにする。しばらく食事に集中してから孫達が動き出した。二階に行って縄跳びの縄を持って来た。立派な手作りの太さも長さもしっかりしていて、見るからに宝物!結ちゃんの保育園の卒園記念の品だそうで、先生方が布をさいて、長い沢山のひも状の布を作り、子供達に編み上げさせた物だそうです。
直ちゃんがみんなの方を向いて縄跳びを始めた。「いちっ、にぃっ、さん!」と数え始めた。何回も何回もこけて、腰をついた。そして、また縄を持って「いちっ、にぃっ、さん!」と始める。縄跳びを跳べるようになったばかりかもしれない。足の下に縄を通す時にピョンと跳び上がり、足をあげている。大仕事で、直ちゃんの「ハァッ、ハァッ、ハァッ」心臓の音も聞こえるようでした。その時、「ゆう!やってみな!」とパパさんが言った。結ちゃんがスーッと出て、縄を持つと、すぐ、「いち、にい、さん・・・」とパパさんの声が数えるうちに「さんじゅう!」となって終わってしまった。結ちゃんは涼しい顔をして坐った。

直ちゃんが、また立ち上がって、パタンパタンと始めた。パパさんが大きな声で数え、直ちゃんはひたすらピョンピョンと縄を跳んだ。飛び上がる様に跳んだ。倒れると心臓のドキドキ、ドキドキが聞こえる程の激しさがある。『エッ、まだやるの?』何回も繰り返した。誰も何回目か数えていない。ただ祈る様に見続けた。「・・・・・・28、29、30!」キャーッ、ワァーッ、みんな集中して見守った。“やった”という達成感が皆の中にあった。
「本当に直はエライ!」

その後、練習中のダンスのビデオが始まった。女の子が踊っているその隅の方から男の子が「キャッ!」とかいう叫び声をあげて走り出てくる。四人位いる様子だった。大丈夫!とは言えない空気がした。結ちゃんを見ながら、直ちゃんは照れながらダンスをしている。結ちゃんがすごく上手に見える。直ちゃん、頑張れ!照れないで!
今日は楽しい誕生日でした。直ちゃんとママは同じ誕生日です。子供は諦めない一途さがあるのだ。素晴らしいです。ヒキツケで救急車に乗った子も六才になってしっかり成長したのです。学校に通える身体になったのです。オメデトウです。
(イラスト : 菊池裕子)