「ショーをするよ! これは入場券です。六時からです。」
小二の結ちゃんが夫と私に渡してくれた。部屋をのぞいてみるとビニールの大きい買い物袋を切り散らかしながらコスチュームを製作していた。結ちゃんのは出来上がっていてもう着用していた。直ちゃんにも大きく切ったビニールを背中につけてやっていた。「マントだ!」って言いながら直ちゃんは走り回っていた。
それを見ながらママが「今日“むさしの村”で仮面ライダーのショーを見て来たのでそれをやってみたいのよねー」と話していた。
「さぁ、それではお客さんは手をつないで入場してください。」・・・夫と手を繋ぐ!(違和感があるけど…)夫と手を繋ぎながら入った。
「入場券を下さい。」
「それではここにお座り下さい。」
ちゃんとイスが二つ並んでいた。
「それではこれから『マントマン』のショーをします。」
右手をグーに握ってマイクの様に口の前に出して話を続ける結ちゃん。
「始めにマントマン(・・・・・)と大きな声で呼んで下さい。そして悪者が来たりしたら『助けてぇ~~』と叫んで下さい。マントマンが戦っている時は『ガンバレ!ガンバレ!』と言って下さい。」上手にスラスラと話す。
そして「マントマン!」と呼びながら結ちゃんは引っ込み、交代でママが「ワッハッハッ!」と照れながら出てくる。その後をバタバタギャアギャアと二人のマントマンが出て来て悪者役のママをやっつけ始めた。
「直!痛いよ~!」「結ちゃん!直に力いっぱい殴らない様に言ってぇ~!」悪者役のママが結ちゃんに頼んでいた。
「直ちゃん。本気でやらなくていいんだからね。痛いから弱くたたくんだよ。わかった?」結ちゃんが一生懸命直ちゃんに言い聞かせていた。
直ちゃんは結ちゃんの言う事をよく聞きます。かわいい姉弟です。
次はあんちゃんが悪者役になるとマントマンはムチャクチャにかかって行き、あんちゃん悪者も二人をかつぎ上げたり、走ったりしてドタバタギャアギャアとなり終わらなくなってしまった。
そしてショーはそのままどこかに行ってしまった。
夫は最近ビデオを買った。初めは「あっ、ビデオ撮るのを忘れた!」という具合だったがマントマンショーの時はカメラマンになっていた。
売り出し後の祭日で、このショーは営業中の店の中で行われました。
夜になって帰る時、ベッドの中に入ったおばあちゃんに挨拶をしに行ったママが「おばあちゃんは歯が何もないの?」と言いながら来たら、二人がバタバタとおばあちゃんを見に行って笑いながら帰って来た。
後から来た直ちゃんが
「一つあったよ!」
「直ちゃん、おばあちゃんの口の中を見て来たの?」
「うん・・・」
この頃、直ちゃんの泣き声を聞いていないな~と思った。
(イラスト : 菊池裕子)